世の中ってむつかしいね【キラ☆キラの感想とネタバレ】

『SWANSONG』のシナリオライターの人が書いた最後のエロゲということで、割と興味があった『キラ☆キラ』という作品。

「バンド」「ロック」「青春」「旅」など明るいキーワード満載でキラキラしたゲームと思いきや・・。

 

やってみて思ったのは「これはもう1回するのはしんどいな・・」って。もう色々と響くものがありすぎて。

まぁ、ただ「1回はやっとけ」って作品ではあります。

 

 

■あらすじ


 

テニス部を退部し、アルバイトに明け暮れて、日々を無感動に過ごす「前島鹿之助」そして、そのアルバイト先にやってきた「椎野きらり」

ある出来事からインディーズの雄「STAR GENERATION」のライブへ行くことになり、そこでロックの魅力に取り付かれた2人は今年で廃部となる第二文芸部の文化祭での出し物ととしてパンクバンドを組むことになる。

 

「STAR GENERATION」の天才ギターリストであり同級生でもある「殿谷健太」から指導を受け、家庭の不和を抱える幼馴染「石動千絵」、病弱なご令嬢「樫原紗理奈」らと組んだバンドは、最後の文化祭で大成功。

そして「STAR GENERATION」に認められたことからライブハウスに出演、さらには名古屋のライブハウスからの出演依頼。

あれよあれよという間にインディーズ界ではちょっとした有名バンドになり、全国ライブ行脚がスタート。彼らのロックの夏が始まるのだった。

 

そして熱い夏が終わった時、物語は動き出す・・。

 

 

 

■登場人物


 

【前島鹿之助】
鹿之助

 

テニス部で1年からレギュラーとして活躍するも怪我などにより退部。同時期に彼女にも振られ、失意のどん底に。ガールズバンドとして売り出したため、本人は不本意ながら女装するも、その女装は一般女性よりも美しいと評判。パートはベース。

 

【椎野きらり】
きらり

 

天真爛漫で才能あふれる女の子。家が貧しいながらもアルバイトを掛け持ちしながら働く勤労少女。その苦労は微塵も見せずに明るいのだが、その明るさが後で大きな反動となる。パートはボーカル。

 

【樫原紗理奈】
かっしー

 

資産家のお嬢様で病弱、おしとやかな性格で美人。そして巨乳。ちょっと世間からズレている感じはするも、少しずつパンクに侵されていく。パートはギター。

 

【石動千絵】
ちえねえ

 

主人公の幼馴染であり、姉御肌な普通の女の子。両親の離婚問題などもあり留年しており、それがこの4人とバンドを組む運命へと繋がっている。まとめ役として部活でありバンドである「第二文芸部」を支えるだけでなく、離婚問題でガタガタになっている家庭をも支えており、自分を抑えている部分も多々あり。本当はのんびり屋で臆病な性格。パートはドラム。

 

誰がお気に入りかというと、文章量からもわかるように「千絵姉」である(笑)

 

 

■共通ルート感想


 

3年生の春からスタートし、バンド練習&特訓。夏休み前に文化祭。その後「STAR GENERATION」のライブにゲスト参加。

そこから名古屋でのライブを皮切りに京都と大阪へ行き、大阪で2度のライブ。ここから分岐に入り、神戸・岡山・広島・福岡・熊本・沖縄といくつかのルートを通り、東京へ帰ってくる。

 

3人のうちの誰かのルートを通るかで行き先が変わり、そこでより親密になっていき、東京に帰ってから物語が動き出す。

そこまでに2つほど分岐を明確に分ける選択肢がある(※非常にわかりやすい)のだが、それ以外は大阪まではほぼ一本道なので、そこまでが長い。

もちろん、物語上必要な人物やエピソードが出てくるので無駄というわけではないのだが、とりあえず長い。

 

 

■個別ルート感想


 

まぁ、多少のネタバレは仕方ないとして(というか7年も8年も前の作品だし)、個別ルートのあらすじなど。

 

–【樫原紗理奈】–

 

病弱な孫娘を心配する祖父に反発するかのように全国ライブへと出たが、帰ってきてから体調を崩し、養生も兼ねてちょっとした軟禁生活に。この時点で恋愛関係になっている鹿之助は山奥にある本邸を尋ね、一度は追い返されるも旅先で出会った樫原紗理奈の叔父によって本邸へ進入。

樫原紗理奈が生まれてすぐに亡くなった両親は、若い頃に駆け落ちし、ずっと擦れ違ったまま和解することないまま今に至る。その両親と同じような状況になった孫娘らに対し、諦めと絶望に飲み込まれる祖父だったが、鹿之助は説得を試みる。

 

一度は全てを拒絶され、全てを投げ出そうとした祖父だが、駆け落ちなどという手段ではなく、「正攻法で家族を見直す」という手段で、同じ過ちを繰り返させないという物語でした。

祖父が諦めて全てを投げ捨てようとするところと、樫原紗理奈の父親の遺書が出てきたところは、なんとも言えない絶望感がありましたね。あと、僕ならここまで粘り強くはできないなと。

 

かっしー01

 

 

–【石動千絵】–

 

父親の不倫、そして離婚。離婚問題で落ち着いたと思ったら、慰謝料などのお金の面で母親が争うということになり、どんどん疲弊していく。今まで普通の仲の良い良心と思っていたのに、突然そんなことになるというのは結構ダメージがでかいとは思うが。

まぁ、このルートは千絵姉はもちろん、父親も母親も何か変な感じでしたね。どうもちょっと整合性がないというか。

 

このルートで言いたいことは千絵姉ではなく、きらりであったりやくざの娘であり翠の口から言われており、それがこれ。

「人は理解できない。理解してもうまくいくとは限らない」と。

 

あと、千絵姉が両親の離婚を分析した結果、その懸念材料が自分にもあるということに気づくという点はよかったです。これは女性なら誰もが持っている素養だと思いますし。

それは何かというと「他人への依存から生まれる幸せは儚い」ということ。

 

千絵姉の母親にとって父親との生活は幸せだった。しかし、それが崩れてしまった時、その怒りや悲しみの行き場はなく、依存していた父親に向かい、家族のことは頭から消え去ってしまった。

そして、千絵姉も恋人関係となった鹿之助に対して、そういう側面があることを自覚している。このこと自体がこの先の不安、同じ過ちを繰り返す可能性として示唆されており、後味の悪い感じもしなくはない。

 

ちえねえ01

 

 

–【椎野きらり・その1】–

 

きらりの天真爛漫な明るさがあるからこそ、いきなり欝展開に持っていかれてしまうというジェットコースターっぷり。

きらりの家庭の事情が明らかになり、思っていたよりも深刻な状態で、学生の鹿之助がどれだけ考えて行動したとしても、どうしようもなくなるという状態に。

 

簡潔にいうと、元エリートだったが働けない父親と過労で倒れた母親、借金が返せなくなり「夜の仕事(=風俗)」が決まるきらり。

これは「その2」と共通するのですが、父親の安いプライドによって家庭は困窮し、自己破産や生活保護は拒むものの、実の娘が風俗で働くのは了承するというクソ展開。

もちろん、そういった輝かしい過去があるからこそ、それにしがみ付かないと自分を保てないというのも理解はできますが、見ている側としては「それで家族を巻き込むな」とは思います。

 

それはさておき、きらりもそういう仕事に就くことになったので鹿之助とは別れようということになります。その数時間後、病院に運ばれるきらり。

父親が一家心中しようと火をつけ、全員を助けようと懸命に動いたきらりだけが命を失うのでした。

まずこの時点で大きな喪失感。それを持ったまま、時は流れ5年後。無気力ながらもバンド活動を続ける鹿之助は時おり死んだはずのきらりの幻想を見るようになる。

 

鹿之助は生い立ちから家族構成、テニスにしろバンドにしろ、そしてきらりを失ったことが決定的なのですが、「彼は自分の生を生きていない」「自分の感情の全てを押さえ込んでいた」のです。

でも、きらりがいたことで少しは「キラキラ」したものになりそうだった世界も、無慈悲に全てを奪って行った。

 

そうした喪失感から死んだように生きていたのだが、きらりの幻想は「忘れ物を取りに行こう」と語りかける。

その忘れ物を取り戻した時、鹿之助は初めて自分の生を受け入れ、そしてきらりの死も乗り越えていけるのでした。

 

これはきらりルートというよりも、鹿之助が自分自身の口で言っていた、「生きていたくない、でも死んでも迷惑がかかる。ならばなるべく、生きているわけでも死んでいるわけでもない状態になろうとした」という人生から、初めて自分の人生を受け入れる物語なのです。

 

鹿之助01

 

 

–【椎野きらり・その2】–

 

上記3つのルートをクリアすると登場。

途中までは「その1」と一緒。しかし、きらりの父親がなぜこんな状態になっていったのかがより正確に描かれている。

 

そして、きらりと別れる最後の1日でのデートとか本当に胸が痛い。

明確に分かれるのはきらりと鹿之助の悲痛な顔をみた父親が自殺未遂をしてから。「その1」では一家心中だったのが、自殺未遂に。

病院に呼ばれた鹿之助はきらりの代わりに父親を見守ることになり、意識を取り戻した父親と話をするも、少し目を離した隙にまたもや自傷行為に。

血を流しながら倒れる父親を見ながら鹿之助は「この父親がいなくなれば全てがうまくいく」と考え、医者を呼ぶのをやめます。

 

このシーンが本当に怖い、人間の闇の部分というものが溢れ出ている。

最終的に「きらりが自分を信頼して父親の面倒を頼んだ」というところで、医者を呼ぶのですが、時既に遅く、父親は死亡。

その後は債務整理やら生活保護などでまだまだ苦しいものの、あの頃よりまかなりマシな生活を送り、きらりの生活はとんとん拍子で良くなっていくのでした。

しかし、「人を見殺しにした」というのは鹿之助の中に残ります。それが重荷になり、きらりとの関係も以前のようにはいきません。

 

そんな中「STAR GENERATION」の解散ライブが行われ、きらりが飛び入りで歌うことになり、スカウトもされる。

なんやかんやで、きらりに父親を見殺しにしたことを告白し、それを聞いて、きらりはプロの道へ進むことを決意。

結果的に恋人関係は元通りになり、一応はハッピーエンドとなるのですが、どうもハッピーとも言い難い。

 

それはおそらく、こういう物語にありがちな「キラキラした才能」を持っているのが主人公ではなく、主人公はあくまでもキラキラした才能の近くで、そのキラキラした世界を見せてもらった側だからかもしれません。

もちろん「キラキラした世界」で活躍するのが成功や幸せで、それ以外が成功や幸せではないということではないでしょう。そんなことをいったら成功していない人の方が圧倒的多数になるわけですから。

ただ、キラキラした才能を持っている人の方が少数であり、プレイヤーである僕らはキラキラした才能を持っていないという、ある種の「諦観」がこのゲームにはあると思います。

つまり、「世の中にはうまくいかないこともある」と。

 

きらりが溢れんばかりの才能を持っていながら家庭の事情で風俗に流れることになりかけたり、ルートによっては死んでしまうということからも、それは伺える。

だからこそ共通ルートのバンド結成から全国ライブまでのあの物語は、振り返った時に当時の頃よりも輝きが増す「本当にキラキラしたもの」として僕らの記憶に残るのかもしれない。

 

きらり02

 

 

■総括というか全体の感想


 

鹿之助ルートと言われる「きらりルート・その1」が一番、心身ともに影響というかダメージというか、そーゆーものがありましたね。

「凡人」としての自分をまざまざと見せ付けられたように感じます。

 

たまに思うんですよね、「キラキラした世界を見ていなかったら、今の僕の生活は全く違っていたものになっていたのではないか」と。

凡人でありながらキラキラした世界を引きずり続けている自分がいるというのも、ある程度は自覚しています。そして、その世界を夢見ていたからこそ、いや、今も見ているからこそ、その生き方が染み付いて、もう元の世界へは戻れない。

 

それでも前に進もうとするならば、きらりが言っていたこの台詞になるんではないでしょうか。

 

「あのね、世の中には、素晴らしい、夢みたいなステキなものがたくさんあるけど、そういうのってさ、欲しいと思ったからって、すぐに全部は手に入らないでしょ?」

「だからね、人は誰でも、すぐ近くにある手に届くものを、やんなきゃいけないことを、一つ一つやっていかなきゃいけないと思うんだ。ステキなものがまだ全然遠いからって、短気になったり、暗い気持ちになったりしないで、ちょっとずつね、やっていくことが大事だと思うの」

「あのね、私もまだ、どんなに手を伸ばしたって、ぴょんぴょん跳ねたって、絶対届かないから、だから、ちょっとずつ、がんばろうと思ってるんだ。もし後戻りしても、くじけないで、ステキなもののことを、忘れないように……。鹿クンも、そういう考え方に、賛同してくれる?」

 

どうせ生きているなら生きていくしかないし、どうせ生きていくなら自分で全てを引き受けた方がいい。

そうすることで、後ろ向きな気持ちであっても、前に進めるような気がします。

 

 

楽曲の中では、この曲が好き。

きらりルート・その1のEDで、鹿之助が前を向いて歩いていくために、「このくそったれな世界に、精一杯の愛を込めた」歌です。

 


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